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●特徴
たくさんあるフィロデンドロンの仲間の一つで、つるを伸ばして成長する姿はポトスにも似ていますが、葉の形がハートなのがフィロデンドロン・オキシカルジウムの特徴です。
観葉植物の中でも成長が早く、つるが伸びてこんもりと植木鉢を覆ってくれるので、ハンギングで飾ると軽やかで涼しげな印象になります。
●育て方
日当たり | 薄いカーテン越しの柔らかい日光 |
最適温度 | 10℃以上 |
耐寒性 | 弱い |
耐暑性 | 強い |
耐陰性 | あり(中程度) |
水やり | 春~秋:土の表面が乾いてから 冬 :土の表面が乾いてから2~3日後 |
肥料 | 緩効性肥料 液体肥料 |
剪定 | 5~10月 |
増やし方 | 挿し芽 水挿し |
◾️日当たり・置き場所
基本は日当たりの良い場所を好むため、薄いカーテン越しの窓辺が理想的な置き場所となります。フィロデンドロンは葉焼けを起こしやすいので、直射日光は厳禁です。
とはいえ、上記はあくまでも理想です。フィロデンドロン・オキシカルジウムは、基本窓のある部屋だとどの場所でも育ちます。ただし明るくない場所で育て続けると、色が薄くなったり茎がひょろひょろ間延びするので、ベランダの軒下など直射日光の当たらない場所へ週に1~2回移動してあげましょう。
外気温が15℃以上であれば外の半日陰の環境であれば元気に育ちます。外に日光を遮るものがなければ、特に真夏は遮光ネットで半日陰の場所を作ると観葉植物にとって最適の環境になります。
◾️育成温度
室内温度は最低でも5℃以上をキープしてください。理想は10℃以上の環境です。直射日光が当たらなければ外でも育てられますが、秋が深まり、外気温が15℃を下回り始めたら室内へ移動させましょう。
◾️耐寒性
室内であれば、5℃程度まで耐えられますが、水やりを極限までひかえたときのみです。寒さに弱いフィロデンドロンへのダメージも大きいので、10℃以上をキープしてあげましょう。
◾️耐暑性
元々は中南米に生息するフィロデンドロン・オキシカルジウムは暑さが得意です。なので、風通しが良くて直射日光が当たらない環境なら日本の暑さも乗り切れます。
◾️水やりの頻度
春~秋は土の表面が乾いたらたっぷりと鉢底から水が出てくるまであげましょう。気温が下がり始める秋から水やり頻度も控えめにします。気温が下がると自然と植物たちは水を求めなくなり、土があまり乾かなくなります。
冬は土の表面が乾いてから1~3日後に水やりするか、鉢を持ったり傾けたりして、植木鉢の水分がほとんどなくなった状態の時に水やりしましょう。水のないときは鉢が軽いです。水やりの際は、受け皿に溜まった水は必ず捨てましょう。根腐れの原因となります。さらに葉からも水分を吸収するので、霧吹きで葉水も行うとより元気になります。
◾️肥料について
肥料を与える時期は4~10月の成長を開始する時期から休眠に入る前までに与えましょう。
液体肥料の場合は、表示されている規定量に希釈したものを水やりの代わりに2週間に1回のペースで与え、置き肥と呼ばれる緩効性肥料は、植物の根本から一番遠い土の上に2ヶ月に1回与えましょう。
休眠期の冬に肥料を与えるのは根腐れの原因となりますので絶対にやめましょう。殺虫効果も備わった液肥がおすすめです。
◾️剪定時期・方法・注意点
剪定時期は生育が旺盛な5〜10月です。伸びすぎたつるや傷んだ葉っぱを剪定します。つる性のため、どこで切っても大丈夫です。節で切った後、そのまま水につけておくと発根して増やすこともできます。
⚫︎注意点
フィロデンドロン・オキシカルジウムを切った時に出てくる液体には、シュウ酸カルシウムが含まれており、皮膚に付くとかぶれる体質の方もいますので、ゴム手袋などを使用してください。もしも液体が皮膚に付いた場合は流水で洗い流しましょう。
◾️おすすめの増やし方
植物を節で切り、水の入った容器に挿して発根させたその後に鉢上げする方法です。発根を目視してからの鉢上げなので、より鉢上げの成功率を上げたい人におすすめの方法です。水挿しで発根管理している間はそのまま飾れるので一石二鳥です。
①水に挿す
節で剪定したオキシカルジウムを水の入ったガラス容器などに挿しておく
②発根待ち
成長期であれば1週間ほどで発根する
③鉢上げ
オキシカルジウムの根が充実してきたら、観葉植物用の土を使い好きな植木鉢に植える
④管理
新芽が出てくるまで半日陰で振動を与えず管理する。土の表面が乾いたら水やりを忘れないこと
●冬越しさせるには?
春先から夏にかけて出回る観葉植物の多くは、日本の厳しい寒さが苦手です。冬に枯らしてまた新しい植物たちを購入する方も多いのではないでしょうか。
ここでは、フィロデンドロンだけでなく観葉植物を冬越しさせるための最低限の対策をご紹介します。
◾️水やりは控えめに
秋が深まり冬になると、春や夏のように水やりが要りません。1週間に1回くらいのペースでの水やり。もしくは、土の表面が乾いて2~3日後の水やりにしましょう。
むしろ水をあげすぎてしまうと、根腐れや、根が冷えてしまい植物自体が傷んでしまいます。寒くなったら土を完全に乾かし切ってからの水やりと覚えておきましょう。
◾️葉水を忘れずに
寒い時期の土の加湿は良くありませんが、葉の乾燥はハダニ発生の原因になります。また葉からも水を吸収しますので、霧吹きで空中の湿度を上げましょう。加湿器での乾燥対策も有効です。葉の表面が湿る程度の霧吹きで大丈夫です。
◾️10℃以上の室内で管理
室内は10℃以上に保ちましょう。室内に取り込み霜から守れたとしても、気温が低すぎるとやがて枯れてしまいます。かといって1日中暖房をつけるのは、光熱費が心配です。
そんな時は、段ボール箱や発泡スチロール、プチプチ、鉢カバーなど入れて冷気を遮断することが効果的です。
◾️夜間の窓辺には置かない
日中は暖かく明るい窓辺は、夜一気に気温が下がります。この大きな気温差が苦手な観葉植物が多いので、窓辺に植物を置きっぱなしというのは避けましょう。
移動が面倒な場合は、厚手のカーテンを閉めるだけでも冷気を遮断できますし、キャスター付きの受け皿を利用すれば、植木鉢の移動も楽です。
●起こりやすいトラブル
◾️葉焼け
特に夏場の窓辺は、葉焼けしやすいので直射日光は厳禁です。
⚫︎症状
・葉が黄色または白っぽく色が抜けている
・茶色く焼けたように変色している
⚫︎対策
・窓辺ならレースなどの薄いカーテンで遮光する
・外の管理なら、すだれなどで遮光する
・葉焼けした葉は元に戻らないので、焼けた部分をカットする
・葉を切り落として、新しい葉が出るのを待つ
◾️根腐れ
主な原因としては水のやりすぎや、皿に溜まった水の放置です。以下のような症状があれば根腐れを疑ってください。
⚫︎症状
・葉が落ちやすくなった
・葉が黄色く変色してきた
・水をあげても元気にならない
・土がなかなか乾かなくなった
・幹が柔らかい
・土から腐ったようながする
⚫︎対策
・新しい水はけの良い土に植え替える
・植え替える時に変色して腐った根を切り取る
・少し水を与えてから霧吹きで葉水をして風通しのある日陰で1~2週間養生させる
・水を与える際、発根促進剤(メネデール)を与える
※一番の注意は、根腐れをしたら決して肥料を与えないでください。
◾️根詰まり
根詰まりとは、植木鉢の中が根でいっぱいになることです。土に含まれる栄養分が尽きることで、成長が止まってしまいます。わかりやすい症状としては以下の通りです。
⚫︎症状
・水が土に浸透しにくい
・鉢底から根が出てきている
・鉢にヒビが入っている
⚫︎対策
・春から夏にかけての成長期にひと回り大きな植木鉢に植え替える
◾️乾燥
室内は、冷暖房やサーキュレーターの風で乾燥しやすい環境となりやすいです。乾燥は、ハダニなどの害虫の発生原因となりますので、しっかり対策しましょう。
⚫︎対策
・冷暖房・サーキュレーターの風を直接当てない
霧吹きで葉水をする
・可能なら加湿器を稼働する
※理想的な湿度は50~60%ですので、湿度計があると便利でしょう。
●発生するかもしれない害虫と対策
以下で紹介するハダニやカイガラムシは、年間を通して発生しやすい害虫です。乾燥や風通しの悪さが原因で発生することが多いので注意が必要です。
◾️ハダニ
ハダニとは、観葉植物を育てていると悩まされる代表的な害虫の一つです。葉に細かな白い虫が動いていたら、対策しましょう。
以下のような症状が観葉植物に現れます。放置しておくと大量に発生し、他の植物にも広がって収拾がつかなくなるので、早急の対処が必要です。
症状
・葉の両面(特に裏面)に小さな白っぽい虫が動いている
葉っぱに蜘蛛の巣のような細かな糸がついている
・葉に斑点状に色が抜けたような跡がある
・葉の色が薄くなっている
⚫︎対策
・ベランダなどの濡れていい場所で、植物の葉や茎を念入りにシャワーで流す
・植物用の殺虫剤を散布する
ハダニは水が苦手で、水で溺れさせて殺虫します。なので、日頃からの葉水はとても重要となります。フィロデンドロンはじめ観葉植物を育てる際は、霧吹きが必須アイテムとなります。霧吹きは、葉の表面が湿る程度で大丈夫です。
⚫︎カイガラムシ
大きさが2~10mmほどで、植物に寄生して樹液を吸って成長し、植物を枯らしてしまいます。さらに、煤病などの病気も誘発させ、排泄物に含まれる糖分にアブラムシやアリまでも寄せつける厄介なムシです。
⚫︎症状
・植物に白くベタベタしたものがついている
・アリをよく見かけるようになった
・新芽が出てこない
⚫︎対策
・成虫は硬い殻に覆われているため、薬剤が効きにくい。そのため、歯ブラシなどでこすり落とすのが有効。
・成虫になる前の対策も重要で、土に混ぜるタイプのオルトランなどの殺虫剤で予防し、スプレータイプの殺虫剤も置いておくと、発生した際にすぐに対処できる。
参考文献
橋詰二三夫 谷亀高広(2015)『はじめての観葉植物の手入れと育て方』ナツメ社