Contents
●特徴
熱帯アメリカに35種類自生するといわれるシンゴニウムは、非常に人気の高い観葉植物です。矢尻型の柔らかい葉っぱを持ち、種類によって様々な色や模様があります。
園芸店やホームセンター、さらに100円ショップでも見かけ、手に入れやすく何よりも育てやすいというのが嬉しい特徴です。また成長も早いので、成長していく様子を見るのも楽しいです。
定番の「ホワイトバタフライ」や、ピンクの葉がかわいい「ネオン」、シックな「ブラックベルベット」など、思わず集めてしまいたくなるほどに美しい特徴的な葉を持ちます。そんな所も多くの人に愛され魅力の一つではないでしょうか。
●育て方
日当たり | 室内:レースカーテン越しの明るい場所 屋外:明るい日陰 |
最適温度 | 20℃〜30℃ |
耐寒性 | 弱い(10℃以上) |
耐暑性 | 強い |
耐陰性 | 強い |
水やり | 春~秋:土の表面が乾いたら 冬 :土の表面が白っぽく乾いて2~3日経過したら |
肥料 | 春~秋:2ヶ月に1回の置き肥として緩効性肥料 冬 :何もしない |
剪定 | 5月~10月 |
増やし方 | 挿し芽 株分け 水挿し |
◾️日当たり・置き場所
屋内の場合は、直射日光の当たらない明るい場所で育てましょう。特に気をつけたいのは夏の太陽で、葉焼けする危険が高まります。
窓のある部屋で窓から離れた場所でも育ちますが、元気な姿を保つためにも明るい場所がおすすめです。屋外も同じく、直射日光に気をつけましょう。
また屋外で管理する際は、軒下などの明るい日陰で育ててください。それでも葉焼けする場合は、遮光ネットやすだれなどで遮光してください。
◾️育成温度
シンゴニウムを育てる上の最適温度は、20℃~30℃くらいです。外で管理している場合、冬場10℃を下回りそうな時や真夏40℃に到達しそうな時は、気温の安定した屋内の明るい場所に避難させてください。
◾️耐寒性
シンゴニウムに耐寒性は備わっていない為、基本的に10℃を下回ると元気がなくなります。秋が深まり肌寒くなってきたら10℃以上の環境で育てるようにしましょう。
◾️耐暑性
シンゴニウムは寒さに弱い一方、耐暑性に優れた観葉植物です。というのも原産地は熱帯アメリカのため、暑さに強いとされています。
風通しを確保し、直射日光に当てなければ日本の夏を越せるでしょう。しかし40℃に到達しそうな日は、室内の明るい場所に避難させましょう。
◾️水やりの頻度
比較的水を好む植物ですので、春〜秋の生育期間は土の表面が乾いたらたっぷりと水やりをしてください。またハダニなどの害虫を洗い流す意味でも、ベランダやシャワールームでシンゴニウム全体にシャワーをかけてください。
そうすることによって、より元気に育ちます。秋が深まって最低気温が15℃を下回るあたりから、水やりの頻度を落とします。
真冬は土の表面が乾いて3日程度すぎた頃、もしくは葉にハリがなくなった頃にたっぷりと水やりをしてください。植木鉢を傾けたり持ったりして、水分を含んで無いくらい軽い時も水やりの頃合いです。
◾️肥料について
シンゴニウムをあまり大きく育てたくない場合は、基本的に肥料を必要としません。もっと大きく育てたい場合は、成長期の春~秋の成長期に置き肥を2ヶ月に1回あげる。もしくは、液体肥料を2週間に1回あげると大きく成長してくれます。
冬は休眠期に入るので肥料を吸収してくれません。枯れる原因にもなるので冬の肥料はやめましょう。
◾️剪定時期・方法
シンゴニウムの剪定時期は、成長期の4~6月ごろ、9月10月ごろの剪定が、カットした後の回復が早いためおすすめです。伸びたなと思ったら切ればいいのですが、真夏の暑い時期や、真冬の寒い時期は成長が止まっている。もしくは緩やかなため、大きく切り戻すのは控えましょう。
方法としては清潔な園芸用のハサミで、気になるところをカットすればいいです。節から新芽や気根と言われる根が出てくるため、成長させたい形をイメージして剪定します。
またシンゴニウムの樹液には、シュウ酸カルシウムが含まれており、手が荒れる体質の方もいます。ゴム手袋をして作業すると安心です。
◾️おすすめの増やし方
冬以外であれば、挿し芽や水挿しで簡単に増やすことができます。おすすめの方法は、水挿しして十分に発根させてから、土に植え付けるという方法です。
- 2〜3節で剪定したシンゴニウムを水に挿す(2~3日に1回水を替える)
- 1ヶ月ほどで発根する(※手根と側根がしっかりと出ていることを確認)
- 好きな植木鉢に観葉植物用の土で植え替える
※数ミリの発根では、土に植え替えても土の栄養分に負けて枯れてしまうので、主根と側根が出てきたくらいで植え付けると安心です。
●冬越しさせるには?
日本の冬はシンゴニウムのように、耐寒性に乏しい観葉植物たちにとって寒すぎます。寒さで枯らさないためには、室内に取り込む以外にも最低3つの対策がありますので紹介します。冬の管理についての記事はここからリンクできます。
◾️水やりは控えめに
シンゴニウムは秋が深まり冬になると、春や夏のように水を必要としません。1週間に1回くらいのペースでの水やり。もしくは、土の表面が乾いて3日後に水やりをしましょう。
水をあげすぎてしまうと根腐れや、根が冷えてしまいシンゴニウム自体が傷んでしまいます。寒くなったら土を完全に乾かし切ってからの水やりと覚えておきましょう。
水やりをした時の鉢の重さを覚えておくと、鉢を持ってみて鉢内に水分がなくなっていることが、傾けたり持ち上げた時の重さの感覚でわかります。いつ水をあげたのか忘れた時は、試してみてください。
⚫︎葉水を忘れずに
寒い時期の土の加湿は良くありませんが、葉の乾燥はハダニの原因になります。また葉からも水を吸収しますので、霧吹きでシンゴニウム自体のの湿度を上げましょう。加湿器での乾燥対策も有効です。
◾️10℃以上の室内で管理
室内を10℃以上に保ちましょう。屋外から室内に取り込み霜から守れたとしても、気温が低すぎるとやがて枯れてしまいます。かといって1日中暖房をつけるのは、光熱費が心配です。
そんな時は、シンゴニウムを鉢ごと段ボール箱や発泡スチロール、鉢カバーなどに入れて冷気を遮断することが効果的です。また床には冷気がたまりやすいので、テーブルや棚の上に置いてあげるとさらに安心です。
◾️夜間の窓辺には置かない
日中は暖かく明るい窓辺は、夜一気に気温が下がります。この大きな気温差が苦手な観葉植物が多いので、窓辺に置きっぱなしというのは避けましょう。移動が面倒な場合は、厚手のカーテンを閉めるだけでも冷気を遮断できます。
どうしても移動する場所がないとき、鉢カバーをしたり空気穴を確保したビニール袋やプチプチで植物全体に覆ってあげることも効果的です。また、キャスター付きの受け皿を使うと、移動時のわずらわしさが軽減します。
●起こりやすいトラブル
シンゴニウムは比較的トラブルの少ない観葉植物ですが、以下で紹介する葉焼けや根腐れ、根詰まりや乾燥は管理を怠ると発生しがちなので紹介します。
●葉焼け
一年のうち夏場の窓辺は、葉焼けしやすいので直射日光は厳禁です。特にシンゴニウムの葉は薄く日光の影響を受けやすいです。
症状
- 葉が黄色または白っぽく色が抜けている
- 茶色く焼けたように変色している
対策
- 窓辺ならレースなどの薄いカーテンで遮光する
- 外の管理なら、すだれなどで遮光する
- 葉焼けした葉は元に戻らないので、焼けた部分をカットする
- 葉を切り落として、新しい葉が出るのを待つ
●根腐れ
主な原因として水のやりすぎや、皿に溜まった水の放置です。以下のような症状があれば根腐れを疑ってください。
症状
- 葉が落ちやすくなった
- 葉が黄色く変色してきた
- 水をあげても元気にならない
- 土がなかなか乾かなくなった
- 幹が柔らかい
- 土から腐ったようながする
対策
- 新しい水はけの良い土に植え替える
- 植え替える時に変色し腐った根を切り取る
- メネデールを規定量に希釈した水を与えて霧吹きで葉水をし、風通しのある日陰で1~2週間養生させる
※メネデールは発根促進剤です
※一番の注意は、根腐れをしたら決して肥料を与えないでください。
●根詰まり
根詰まりとは、植木鉢の中が根でいっぱいになることです。そうなると成長が止まってしまい、土に含まれる栄養分が尽きてしまいます。わかりやすい症状としては以下の通りです。
症状
- 水が土に浸透しにくい
- 鉢底から根が出てきている
- 鉢にヒビが入っている
対策
- 春から夏にかけての成長期にひと回り大きな植木鉢に植え替える
乾燥
室内は、冷暖房やサーキュレーターの風で乾燥しやすい環境となりやすいです。乾燥は、ハダニなどの害虫の発生原因となりますので、しっかり対策しましょう。
対策
- 冷暖房・サーキュレーターの風を直接当てない
- 霧吹きで葉水をする
- 可能なら加湿器を稼働する
※理想的な湿度は50~60%ですので、湿度計があると便利でしょう。
◾️発生するかもしれない害虫と対策
以下で紹介するハダニやカイガラムシは、年間を通して発生しやすい害虫です。乾燥や風通しの悪さが原因で発生することが多いので注意が必要です。
●ハダニ
ハダニは、観葉植物を育てていると悩まされる代表的な害虫の一つです。葉に細かな白い虫が動いていたら、対策しましょう。
以下のような症状が観葉植物に現れます。放置しておくと大量に発生し、他の植物にも広がって収拾がつかなくなりますので、早急の対処が必要です。
症状
- 葉の両面(特に裏面)に小さな白っぽい虫が動いている
- 葉にクモの巣のような細かな糸がついている
- 葉に斑点状に色が抜けたような跡がある
- 葉の色が薄くなっている
対策
- ベランダなどの濡れていい場所で、植物の葉や茎を念入りにシャワーで流す
- 植物用の殺虫剤を散布する
※特にハダニは植物の葉裏に潜んでいることが多いので、葉裏も忘れずにケアしましょう
ハダニは水が苦手で、水で溺れさせて殺虫させます。ですから、日頃からの葉水はとても重要となります。シンゴニウムはじめ観葉植物を育てる際は、霧吹きが必須アイテムとなります。
●カイガラムシ
大きさが2~10mmほどで、植物に寄生して樹液を吸って成長し、植物を枯らしてしまいます。さらに、煤病などの病気も誘発させ、排泄物に含まれる糖分にアブラムシやアリまでもよってきてしまう厄介なムシです。
症状
- 植物に白くベタベタしたものがついている
- アリをよく見かけるようになった
- 新芽が出てこない
対策
- 成虫は硬い殻に覆われていて薬剤が効きにくいため、歯ブラシなどでこすり落とす
- 土に混ぜるタイプのオルトランなどの殺虫剤で予防
- スプレータイプの殺虫剤を使用する
◾️参考資料
橋詰二三夫 谷亀高広(2015)『はじめての観葉植物の手入れと育て方』ナツメ社